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往年の邸宅を彩る創意工夫の結晶~金唐革紙


訪問先: 東京都豊島区 金唐紙研究所さま
訪問日: 2016年12月26日




日本全国に点在する、明治・大正期の名士の邸宅。その室内を華やかに飾る、まるで浮彫のような質感の壁紙が、「金唐革紙(きんから・かわかみ)」です。17世紀、欧州の宮廷や教会の壁掛けや椅子の背張りとして使われていた「金唐革(きんからかわ)」が輸入され、武具や馬具、煙草入れなどの奢侈品に加工されて大名や裕福な商人に愛好されました。ここから着想を得て、試行錯誤の末、革の代わりにえのき油を引いた強化和紙(擬革紙)を用いて作られたのが金唐革紙です。

開国後、欧州の万博に出品されて好評を博した金唐革紙は、その後輸出による外貨獲得を目指す大蔵省印刷局により改良が重ねられます。西洋だけでなくオリエントの意匠を採り入れた豪華なモチーフも人気を呼び、20世紀初頭まで欧米に盛んに輸出されました。

今回は、その製造技術を復元し、各地の重要文化財の内装を手掛ける「金唐紙研究所」の代表・上田尚(うえだ・たかし)さんと、技術者の高橋シヅ代さんにお話をお伺いしました。


箔押しと彩色で華やかに彩られた金唐革紙


上品な白地に金の模様



―上田さんは、どのようにして金唐革紙の制作に携わるようになったのですか。

上田さん(以下敬称略):
もともとは、文化財関係の美術印刷に携わっていたのですが、旧日本郵船小樽支店に貼られていた壁紙の修復工事が行われた際、そこに使われていた金唐革紙を復元しようという動きが起こりました。そこで私が依頼を受けて、一度途絶えてしまった技術を2年かけて復元しました。1985年のことです。その後50歳で独立して今に至ります。

―現在、何名の方が携わっているのですか。

上田:
私と、高橋、あともう1名の3名で制作しています。


代表の上田さん(右)と、高橋さん



―復元後は、どのように制作しているのですか。

上田:
原料の紙は手漉き越前和紙です。これに、金箔や銀箔、または錫箔を置いていきます。金はやはり高価になりますので、酸化防止の意味も併せて銀や錫にワニスを塗って金色を出す場合もあります。

型押しは、桜材に模様を手彫りした版木棒を使用しています。版木棒は、幸いなことに国立印刷局と、紙の博物館※に所蔵されているものがあり、これを利用しています。

※紙の博物館が、137本と最も多くの版木棒を所蔵している(2017年5月現在)。


桜材を手彫りして作られた版木。近年ではこのような大きな桜材の入手も難しいという。





型押しのあと、全て手作業で彩色を施します。青などは、日本画の顔料を膠(にかわ)で溶いて使うこともありますが、通常はリキテックスというアクリル絵の具を使用しています。

高橋:
壁紙ですので着色範囲も広いですし、文様によっては本当に神経を使う作業になります。


非常に神経を使ったと言われる百合柄



―西洋の金唐革とはどのように違いますか。

上田:
金唐革は子牛の革を使用しており、素材が違うだけでなく、彩色には油絵具が使われています。経年による耐性には乏しいのか、このように年月を経たものはかなり傷んでしまっています。


椅子に張られていたという、西洋の金唐革



―文様にはどのようなものがありますか。

上田:
天使やアーカンサス(アザミの葉)、獅子など西洋風のモチーフから、オリエント風のイスファハンという文様、定番の花鳥など、さまざまです。彩色によって同じ文様でもがらりと雰囲気が変わります。

―現在、金唐革紙はどのように使われていますか。

上田:
やはり、重要文化財の壁面など、建材としての利用が主になります。最近では、東京駅のステーションホテルのスイートルームの内装にも使用されました。丈夫さや耐久性を活かして化粧箱やアクセサリーケース、名刺入れなどにも利用しています。着物の帯も制作したことがあります。もともと建材なので、一つ一つの柄が大きく小物に使われた場合は全体のモチーフをお見せできないのが残念ですが、文化財だけでなく日常生活でもお使いいただきたいと考えています。


貝合わせに加工された金唐革紙


箱の外装



訪問を終えて:

記者が初めて金唐革紙を目にしたのは、上野公園の近くにある旧岩崎邸でした。その内装に使われた金唐革紙の美しさが非常に鮮烈な印象として残り、売店で販売していた金唐革紙のしおりを大切に持っていました。今回、多種多様な金唐革紙を実際にお見せいただき、豪華なだけではない、奥行きのある美しさに改めて感動を覚えました。皆さんも機会があれば、ぜひ金唐革紙が内装に使われている建物に足を運んで、その魅力を実際に目で確かめてみてください。



▼関連リンク
金唐紙研究所
紙の博物館


以下、金唐革紙が内装に使用されている建造物の一部

国内
北海道・東北:
旧日本郵船小樽支店(北海道小樽市)
青森銀行記念館(青森県弘前市)
旧池田氏庭園(秋田県大仙市)

関東:
旧岩崎邸(東京都台東区)
旧前田侯爵邸洋館(東京都目黒区)
東京芸術劇場(東京都豊島区)

中部:
起雲閣(静岡県熱海市)
旧林家住宅(長野県岡谷市)
旧中越銀行本店(富山県砺波市)

関西・中国:
移情閣(兵庫県神戸市)
入船山記念館(広島県呉市)

九州:
旧蔵内邸(福岡県築上町)

海外
ヘットロー宮殿(オランダ、アペルドールン)
モーリッツブルク城(ドイツ、ドレスデン)

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