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飾り金具が引き立てる木と漆の芸術~岩谷堂箪笥(3)


インタビューレポート(3)
現代のライフスタイルへの挑戦~「岩谷堂箪笥生産協同組合」様
訪問日:2010年10月8日

岩谷堂箪笥インタビューレポートの最終回は、業界の歴史や最近の動向、市場対応について岩谷堂箪笥生産協同組合の事務局長、内田純一さんに伺った内容をお届けいたします。業界の抱える課題や新しい顧客を開拓するための取り組みなどについて、詳しくお話をしていただきました。



精巧な手打ち金具(銅製)の龍。(提供:「彫金工芸 菊広」様)
精巧な手打ち金具(銅製)の龍。(提供:「彫金工芸 菊広」様)

岩谷堂箪笥の起源:
岩谷堂箪笥の起源は定かではありませんが、平泉に藤原清衡が居住する頃に京都から伝えられたといわれています。初期のころは箪笥というより大きな箱、後の長持ちのようなものでした。その後、江戸中期の1770年代の天明の飢饉で東北地方の領民が餓死の危機に見舞われたのを契機に、米に依存した経済から脱却するための産業振興策として箪笥や長持ちなどの箱ものが作られるようになりました。現在のような箪笥になったのは江戸中期以降で、木工・塗装・金具を用いた堅牢な箪笥は金庫代わりに使うものとして考案されました。当初は材料としてスギやケヤキが使用されていたようで、近年になり岩手産のキリで箪笥が作られるようになると、金具にも桐の文様が多くあしらわれるようになりました。


岩谷堂箪笥の生産体制の変化:
岩谷堂箪笥の制作は最盛期(昭和に入ってからで、それ以前はわからない)、には50から60の家内手工業の工場があり、木工・塗り(漆)、金具の分業で行われていました。分業することで生産効率が上がり、職人を確保するためにも木工職人・漆塗り職人・金具職人・建具職人等のような分業体制の方が技術の習得に好都合だったようです。



専門の手打ち金具の職人さんが模様を裏から打ち出しているところ。(提供:「彫金工芸 菊広」様)
専門の手打ち金具の職人さんが模様を裏から打ち出しているところ。(提供:「彫金工芸 菊広」様)

しかし、生産数の減少と共に分業では生産調整がしにくくなり、木工と塗りは一社の一貫生産でやるようになりました。一人で複数の職人兼ねることで人手が少なくて済み、少量生産に対応しやすいためです。ただ金具は特殊な技巧を要するので、現在も専門の職人によって作られています。金具職人は簡単なものでも5年、難しいもので10年の熟練を要します。現在金具を制作する専門の会社は一社のみとなり、専門の職人も3名のみとなっています。(藤里木工さんのみ、自社で金具まで生産しています)。


岩谷堂箪笥関係の職人さんは最盛期には150人ぐらいいましたが、現在は約65人程度です。若い人達も結構いて後継者問題はありません。職人希望者も全国から来ており、空いた職種から採用していますが、20代から30代の若い人の応募が多くなっています。できるだけ年配の職人の仕事量を減らし、若い職人さんに仕事を回して後継者を育てようとしています。


岩谷堂箪笥の販売:
岩谷堂箪笥のピークは平成9年でそれ以降は下降線を辿っています。売上減少の原因として考えられることは、大きく分けて2点あります。

  1. 価格と住宅事情: 経済環境の変化で高額な岩谷堂箪笥は販売が難しくなっています。数十万から数百万の箪笥は、実用的というよりインテリアとしての購入されるわけですが、最近の住宅事情もあり海外からのモダンな家具に負けてしまっている状況です。手作りであること、材料が国内産であること、希少価値のため手間がかかる事などでどうしても価格は高くなります。

  2. 販路の少なさ: 販路の開拓に制約があり、今後販売方法の選択肢を増やしていく必要があります。



箪笥作りの技術を生かした小物。小さな箪笥でもとても滑りがよく、引き出しやすい。(提供:「藤里木工所」様)
箪笥作りの技術を生かした小物。小さな箪笥でもとても滑りがよく、引き出しやすい。(提供:「藤里木工所」様)

新製品の開発:
箪笥の販売には規制があり、独自に販路を開拓できないが箪笥以外であれば独自販売が出きますので、新製品開発には力を入れています。若いデザイナー等に依頼して小間物製品や、お土産品などの開発をしてみましたが、思うようには売れませんでした。現在も約40品の製品開発に取り組もうとしていますが、お土産中心です。来年の平泉の世界遺産登録に期待しています・・・岩手のお土産として外国人に売りたいと思っています(註:インタビューした2010年当時は世界遺産未登録)。ただお土産品は単価が安くなることと箪笥技術とは関係のない単なる木工品となってしまうことが懸念されます。


原材料:
原料の木材は、キリ、ケヤキ、スギで全て国内産にてまかなっています。スギ・ケヤキは関東地方(栃木県など)、キリは岩手県内、北陸などから購入しています。以前は原木で購入していたが今は製材品で購入しています。最近はケヤキがなかなか手に入りにくくなってきています。これからはスギの無垢材を使うことが多くなるのではないかと思います。海外の原木を使う事はありません。伝統工芸品は地域の材料を使う事が原則となっています。



完成品に取り付けられた金具(鉄製)。(提供:「藤里木工所」様)
完成品に取り付けられた金具(鉄製)。(提供:「藤里木工所」様)

金具:
箪笥に使われる金具には、手打ち金具と鋳物金具がありますが、現在では製品の9割までは鋳物金具を使っています。手打ち金具は1割ぐらいのものだと思います。


今後の課題:
箪笥の使う場面が本当になくなってきています。新築マンションや新築住宅は箪笥から備え付けクローゼットになりました。箪笥は場所をとるので現在の住宅事情には合いません。マンションや新築住宅の備え付け家具として岩谷堂箪笥技術が使えるよう製品開発が必要と考えており、実際に開発もしています。




インタビューを終えて:
岩谷堂箪笥の職人希望者は多く、今のところ後継者には問題がないとのことで安心しましたが、伝統的な箪笥の市場自体が縮小しているため業界の発展という点は大変懸念されます。世の中の消費者が大量消費に疲れ始めてきており、本当に良いものを長く使いたいという価値観にシフトしつつあるいま、現代の住環境に合った製品の開発と、販路の開発が非常に重要であると思われます。



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