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しなやかで華やかな白~姫路白なめし革細工

革とは思えないほどのしなやかな軽さ、そして陽に当たるほど明るくなるという、不思議な白さが特徴の、兵庫県特産・姫路白なめし革。この革を利用した姫路白なめし革細工の職人、水田輝夫(みずた・てるお、有限会社キャッスルレザー会長)さんを東京でインタビューしました。

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インタビュー日: 2010年9月18日
インタビュー地: 東京・銀座
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姫路白なめし革・姫路白なめし革細工について:

姫路白なめし革(姫革)は、千年以上前に大陸から製法が伝えられたと言われる牛皮なめし革です。本なめしと言われる伝統的な製法では、姫路市を流れる市川の川の水と、塩と、なたね油だけを用いて、手足を使ってなめし作業を行います。

戦国時代には、しなやかで強靭な白なめし革を利用した武具や馬具がつくられ、江戸時代中期以降から、煙草入れなどの小物が「革細工物」として普及するようになりました。

現在の姫革細工は、白なめし革に手もみをしてしぼ(革のしわ)を入れ、さまざまな文様を型押しした上で彩色し、漆でさび入れ(革のしぼに漆を塗る)をして仕上げています。白い革であるにも関わらず汚れにくく手入れも簡単で、軽くしっくり手になじむとても使いやすい革小物です。

キャッスルレザーさんでは、バッグ、ブックカバー、メガネケース、財布、キーケースなど、多種多様な商品を生産しています。

2011/03/09追記:
姫革細工お取り扱い開始いたしました!
JTCOオンラインショップ「和遊苑」で、姫路白なめし革細工の取り扱いを開始いたしました。


白に映える華やかな柄
白に映える華やかな柄


―姫革細工の仕事は、どのように始められたのですか。

水田さん(以下、敬称略):
私は城崎(現在の兵庫県豊岡市)の農家の長男の生まれで、農業では食えないと思ったので、最初は自動車の整備工として仕事を始めました。整備工として一番上までいったあと、独立して整備工場をやっていましたが、そのころ姫革細工に出会ったんです。

いまの会社は私で3代目で、先代との間に血縁関係はありませんが、「跡継ぎがいないので、やってくれないか」と言われて。初めて姫革細工を見たとき、「うわ~、こんなのがあるんだ!」ってすっかり魅せられてしまって。それで、30歳のときに決意して転職をし、家族と一緒に姫路に移ってきました。

―工房では、どのくらいの人数で製作をされているのですか。

水田:
私と息子の二人と、彩色担当が数名です。息子が高校を出るころに、一時事業が大変なときがあって、そのとき息子が「父ちゃんの助けになるのなら、自分は大学をあきらめる」と言って18歳で工房に入ってくれたんです。うれしかったですね・・・。最近では、孫たちが「じいちゃん、何してるの?」と言って工房に入ってきて作業を見ています。ミシンがあったりして危なくて心配なんですが(笑)。

―製作で苦労されるのはどんなことですか。

水田:
現在、兵庫県の伝統的工芸品に指定されているのは当社1社のみで、素材や加工に使う薬品の確保が課題になっています。素材となる白なめし革だけでなく、革の染色に使うファンデーションのような、白なめし革に合った薬品の製造が中止になったりして、急ぎ県の皮革研究所に研究してもらったこともあります。市場規模が小さい限り、これからも原料の確保は常に課題になっていくと思います。

―販路はどのようになっていますか。

水田:
提携している販売店への卸がほとんどです。百貨店は1割くらいでしょうか。インターネットでの通販もしています。
過去に、「リビング新聞」という情報誌に取り上げられて、全国的に姫革細工が知られ、販売できるようになりました。


細かいしぼは本なめしの特徴
細かいしぼは本なめしの特徴


―(水田さんが腰につけていた姫革細工のバッグを指して)すごく素敵なバックをお使いなのですね。ちょっと見せていただけますか。

水田:
いいですよ。伝統工芸といっても、今の生活の中で使われるものを作らないと売れません。いつまでも(江戸時代の)たばこ入れではね・・・(笑)。百貨店の展示販売に来ると、お客さんが「こんなものを作ったらいい」と教えてくれるんですよ。(ポケットからメモ帳を取り出して)だから、いつもそんな意見やアイデアをメモしておくことは欠かしません。

あと、これは30年以上使っている名刺入れなんです。森本さんという本なめしの職人さんがなめした革でできているんです。革の表面に、細かいしぼがあるでしょう。これが、本なめしの特徴なんです。本なめしでなければ、このような細かいしぼは出ないんです。


30年以上使っているとは思えない名刺入れ
30年以上使っているとは思えない名刺入れ。ほとんど傷みがない


ときどき、お客さんが昔作った製品を見せてくれるんです。10年以上前に作ったのとかね。ずっと大事に使ってくれているのだと思うと、とてもうれしいですね。

―製造にあたってどんなことに気を遣っていらっしゃいますか。

水田:
常に、信用していただける製品を作ることですね。以前、仕入れていた薬品が別のものになっていて、それが製品に影響して販売先からクレームをいただいたことがあります。息子に、「お前、何かしよったんか!」とあわてて聞くと、「いや、何もしてへん。」と。成分が変わっていたのに気づかなかったんですね。

親父が亡くなる前に言われたことがあるんです。「お前、ちゃんと仕事してんのか。すぐい(まっすぐな)人間でないとあかん」と。信用を得るのは何年もかかるが、信用を失うのは一瞬だからと。忘れられないことばです。

インタビューを終えて:
今年、古希を迎えられた水田輝夫さん。語ることばの一つ一つに、姫革細工への思いと、仕事に対する誠実な姿勢、瑞々しい好奇心を感じ、とても力を与えていただいた気がしました。東京での展示会のあと、息子さんのご家族と北海道旅行に行き、戻ったら今度は家族で故郷の城之崎にログハウスを建てるのだと、うれしそうに話してくださいました。

ご自分の仕事への愛着と真摯な姿勢は、それを近くでご覧になっているご家族だけでなく、製品として私たちにも伝わってきます。みなさんにも、姫革製品を手にとって、しっくりと手になじむしなやかさを味わっていただきたいと思います。

参考サイト:
姫路白なめし革の歴史(兵庫県伝統的工芸品リストより)

関連サイト:
有限会社キャッスルレザー

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