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JTCOメルマガ『風物使』

2010年08月04日 配信
「通り雨が涼運ぶ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立秋号

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  「通り雨が涼運ぶ」~ 季節の使い・JTCO『風物使』立秋号
    vol.4 2010年8月4日発行 (旧暦 6月24日・水無月)

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拝啓
各地で猛暑が伝えられる今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
空調に慣れた体にも、時折降る雨が運んでくる自然の涼は、格別にありが
たく感じるものですね。8月7日の立秋からは、季節のお便りも残暑見舞いに
なります。残る暑さの中、一緒に夏の楽しみ方を見つけてみましょう。


+‥‥+ 2010年立秋号 目次 +‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+

 ・季節の祭り…………… ご先祖さまをおもてなし:『お盆』
 ・旬の味………………… 占いにも使われた魚:『アユ(鮎)』
 ・季節の花……………… 生命力の象徴:『クズ(葛)』
 ・JTCOからのお知らせ… 『土佐和紙のふるさと訪問記』掲載しました
 ・編集後記


○o 季 節 の 祭 り ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


ご先祖さまをおもてなし:『お盆』

喜ばしいことが重なること、また非常に忙しいようすのたとえを「盆と正月が
一緒に来たよう」といいますね。お正月はさておき、特に都市部ではもうお盆
に特別なことをしないところもあり、この表現にピンとこない人もいると思い
ます。それでも「盆踊り」は夏の風物詩としてなくてはならないものですね。

日本には古来からの習俗として年に二度、初春と初秋の満月の日に、祖霊が
子孫のもとに還ってきて交流するという行事があり、初秋の行事が旧暦の7月
15日に行われる仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」(=父母や祖霊を供養する
行事)と結びついたのがお盆であるとされています。

日本で始めて仏教行事としてお盆が執り行われたのは、606年の推古天皇の行
事が最初といわれており、平安~鎌倉時代には貴族や僧侶のあいだではすっか
り定着していたようです。「盂蘭盆(うらぼん)」は、仏教経典の原語である
サンスクリット語では"ullambana(ウランバナ)"=「地獄で逆さに吊るされ
て苦しむ」という意味があります。仏教では、地獄で苦しんでいる人の魂を救
うための行事が本来のお盆なのです。

一般庶民が仏教と結びついたお盆を行うようになったのは江戸時代からと言わ
れていますが、それまでも祖霊祭祀としての「お盆」は各地の庶民のあいだで
も行われていたのでしょう。小暑号でご紹介した七夕は「棚幡」とも書き、も
ともとお盆の準備をするための行事であったといわれ、7日の夕刻からご先祖
をお迎えする「精霊棚」や笹、幡などを安置することもあるようです。

「精霊棚」へのお供えものは地域と宗派でさまざまですが、代表的な飾りとし
て、キュウリとナスに楊枝の足をつけた「精霊馬」と、ガクつきのホオズキが
あります。キュウリはご先祖さまに少しでも早く来ていただけるようにと、足
の速い馬に、ナスは戻ってきた家でのんびりとくつろいでいただいたあとに、
お供えものを積んでゆっくりとお帰りいただけるようにと、牛に見立てられた
ものといわれています。ホオズキは「鬼灯」とも書き、ご先祖さまが提灯を目
印に迷わずに家に戻ってこられるように、という意味があります。

盆踊りは本来仏教行事で、平安時代に空也上人が始めた念仏踊りが盂蘭盆と結
びつき、精霊をお迎えしてお送りするために行われるようになったものです。
かつてのお盆は旧暦の7月15日であったため、常に満月の夜になり、晴れてい
れば月明かりの下で夜通し踊ることもできたのでしょう。
時代とともに盆踊りの宗教性は薄れ、娯楽としての色合いが強まりましたが、
ご当地音頭に見られるように、地域のコミュニティの結束を強める役割を担っ
たり、男女の出会いや求婚の場として大切な行事とされてきました。

忙しい現代生活での貴重な「お盆休み」。休息やレジャーのために使うのはも
ちろん、自分がいまここに生きていることを、ご先祖さまに感謝するための時
間もちょっぴり持てるとよいですね。


▼和合の念仏踊り [長野県阿南町]
8/13~16
念仏踊りのしきたりを今も伝えるといわれる踊りです。
http://www.piconet.co.jp/nippon-net/nippon.cgi/see/15015



○o 旬 の 味  ━━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


占いにも使われた魚:『アユ(鮎)』

「松浦川川の瀬ひかりあゆ釣ると 立たせるいも(妹)が裳のすそ濡れぬ」
(『万葉集』巻5-855)

(松浦川でアユ釣りに立つ女性の裳のすそが、輝く浅瀬の水面(みなも)に濡
れています。)

「篝火の影にぞしるき玉川の 鮎ふす瀬には光そひつつ」(『夫木和歌抄』)

(鵜飼いの焚くかがり火が、アユのいる多摩川の浅瀬に明るい光を添えていま
す。)

香ばしい香りが夏の風物詩となっているアユ。アユ漁解禁すぐの6月の若アユ
も有名ですが、ちょうど今頃のアユは「土用鮎」といわれ、もっとも成熟して
香りが高く旬となります。

アユは古くから日本人に親しまれていた魚で、万葉のころからさまざまな和歌
に詠われてきました。冒頭の万葉集の歌は、長く旧暦の4月上旬に九州の松浦
川あたりで行われていたとされる女子のアユ釣りの様子を詠んだものです。こ
の行事は、神宮皇后が三韓遠征の勝利を占うために裳のすそ糸を解いて釣り針
を結び、飯粒をつけて願いとともに川に投げ込んだところアユが釣れた、とい
う神話にちなんだものでした。

中国語で「鮎」はナマズのことを指しますが、日本では上記の故事のように占
いに使われたため、アユは「魚」へんに「占う」の字が当てられるようになっ
たと言われています。「アユ」という言葉の語源は、一説によれば秋に海に下
ることから、古語の「あゆる(=落ちる)」から転じたとされています。

律令の施行細則を定めた10世紀の『延喜式』には、朝廷へ各地から献上された
魚が記されていますが、その量や産地の分布がもっとも多いのはアユなのだそ
うです。近くの琵琶湖からは鮮魚が、遠い国からは塩蔵や干物に加工したアユ
が届けられました。アユにはウナギ同様ビタミンB1をはじめとする各種ビタミ
ンやミネラルが含まれているため、夏季の滋養強壮にも喜ばれたのかも知れま
せん。

冒頭の2首目は、14世紀の成立とされる『夫木和歌抄』に詠われた玉川(多摩
川)のアユの鵜漁のようすです。最近では水質の改善により再びたくさんのア
ユが多摩川に戻ってきて人々を喜ばせていますが、当時はこんな光景が夏の風
物詩だったことも想像されますね。

中国語では"香魚(シャンユイ)"と呼ばれるアユ。その味と香りを楽しむのは
素朴な塩焼きが一番ですが、ちょっぴり変わったレシピで旬のアユを楽しんで
みるのもよいですね。


▼鮎ぞうすい [岐阜県]
あっさりとした塩としょうゆがアユのうまみを引き出します。
http://www.piconet.co.jp/magazine/recipe/13.html



○o 季 節 の 花 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………


生命力の象徴:『クズ(葛)』

「大崎の荒磯(ありそ)の渡(わたり)延(は)ふ葛の 行方も無くや恋ひ渡
りなむ」(『万葉集』巻12-3072)

(大崎の荒磯の渡し場まであてどなく這い延びるクズのように、この先どうな
るかわからないまま、私はあなたを恋し続けるのでしょうか。)

クズは日本原産の植物で、8月~9月に咲く赤紫の花は秋の七草にもなっていま
す。夏のあいだは1日に数十センチとも言われるすさまじい勢いで所かまわず
繁茂することから、古くから和歌にはたくましい生命力の象徴として、打ち払
おうとしても再び心を覆う恋心や、はかない人の命との対比に詠われてきまし
た。

クズの用途は広く、根からはくずもちやくずきりの原料となるくず粉や、血行
をよくして体を温めることから、風邪薬としておなじみの葛根湯が作られます。
甘い芳香を放って咲く花は、煎じて飲めば二日酔いに効果があり、茎はかご編
みの原料や織って葛布に加工されます。葉はデンプン質を多く含み、馬や牛な
どの草食動物が喜んで食べるため、かつては飼料としても重宝されました。

「葛」という字は中国語の「葛藤(=「カズラ」や「フジ」、枝が絡み合うさ
まから心のもつれの意に転じる)」から取られましたが、「クズ」の音は、今
も奈良県の地名に残る吉野川上流の国栖(くず)の人たちが、くず粉を作って
売ったことに由来するとされています。また、花はフジを逆さにしたように上
に向かって伸びるので、上り藤とも呼ばれます。

夏の涼果の原料として身近なクズ。ひんやり美味しいだけでなく、薬効も期待
できるとあっては、本くず粉で作られた本物をぜひ味わいたいものです。生い
茂るクズのように、パワーももらえるかも知れませんよ。



○o JTCOからのお知らせ ━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

『土佐和紙のふるさと訪問記』掲載しました

土佐和紙の主要産地である、高知県吾川郡いの町への訪問レポートをWebに掲
載しました。確かな技術とともに、豊かな自然と人との共生が優れた製品作り
に欠かせないということを実感した訪問となりました。

本文はこちらで:
http://www.jtco.or.jp/tradition_craft/?id=5


○o 編 集 後 記 ━━━━━━━━━━━━━━・・・・・‥‥‥………

『風物使』第4号を最後までお読みくださったみなさま、誠にありがとうござ
いました。

伝統文化について学ぶようになってから感じるのは、昔の日本人が自然に感謝
と畏れを持ちつつ、いかにその恵みを智恵と感性によって、生活と心の糧にし
てきたかということです。

工業化された社会は、私たちの生きる能力や考える力、感受性を奪うのでしょ
うか。そうならない生き方を、少し立ち止まって考えてみたいですね。


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【季節の使い・JTCO『風物使』】

発 行 日:月2回発行(二十四節気ごと)
発行開始日:2010年6月18日

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〒105-0002 東京都港区愛宕1-3-2-1401
TEL/FAX: 03-3431-5030
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